『あの緑を再現したい』記憶の中の景色を取り戻す


 春から夏にかての植物の緑は、爽快で気持ちの良いものです。ところが写真に撮ると今ひとつきれいに撮影できていないことって多くないですか?

フォトレタッチで新緑の参道を表現した例 初夏の雨上がりに訪れた神社の参道は、木々の生い茂った若葉が太陽の光を透かして目に染みるほどに緑を鮮やかに感じたのに、実際にデジカメで撮影した画像からはそのときの色彩は感じられません。トンネルのような緑の参道の一部が途切れて、所々スポットライトにように明るくなっていた様子も、写真を見た人に伝わるほど明確ではありません。周囲、とくに左側は狭い車道に人家がたち並んで、実際にはもっと暗く感じたにもかかわらず白く飽和しています。

 自分が確かに感動して撮影した写真…、GIMPフォトレタッチしてそのときの感動を取り戻します。

新緑の参道を鮮やかに再現する

葉っぱの緑の彩度を調整する方法 画像ファイルを開いたら、彩度をアップするために使用するレイヤーを複製します。

  1. [背景]レイヤーを複製して、[道具]タブをクリックして表示されるメニューから[色ツール]の[色相−彩度]をクリックします。
  2. [色相−彩度]ウィンドウの[G]を選択したら
  3. [彩度]を右側にスライドさせて、自分の納得できる位置まで彩度を上げます。この場合は一気に最大まで上げてしまいました。
    単に彩度を上げるだけならこれで終了です。でもせっかくですからもう少し演出してみたいと思います。
トーンを落とすためのグラデーション

グラデーションを塗るレイヤーの新規作成 薄暗い参道を再現するために使用するレイヤーを作成します。

  1. [新規レイヤー]ボタンをクリックして新規作成し、
  2. 作成したレイヤーを選択状態にしておいて、
  3. 不透明度の数値を少し下げ、背後の画像が透けて見えるようにします。

グラデーションツールについて 新規作成したレイヤーにグラデーションを敷きます

  1. ブレンド]ツール(グラデーションを用いて塗りつぶす)をクリックして、
  2. オプションメニューの[グラデーション]の窓をクリックします。
  3. 表示されたグラデーションのリストから Rounded edge を選択します。

グラデーションもブラシのように新規作成できますが、今回は在りものを使って作業します。

グラデーションツールでの塗りつぶし方 グラデーションを描画するときは画面の任意の場所でドラッグします。ドラッグした距離で設定されているグラデーションが描画されます。ドラッグした始点と終点の外側は、グラデーション見本のそれぞれの左右の色で塗りつぶされます。必要に応じて画像の表示を縮小させて作業をすると良いでしょう。また垂直に真っ直ぐ(または15度単位)描画するには[Ctrl]キーを押しながらドラッグします。
この写真の場合は中央よりやや上の明るい場所に、グラデーションの明るい部分がくるようにドラッグします。

乗算モードでのプレビュー うまくグラデーションが塗れたら、「レイヤー」ウィンドウの「モード」で[乗算]を選択して、「不透明度」を適当な値まで下げます。薄暗い参道のイメージが戻ってきました。
※[モード]に関しては「各種モードにおける表示テスト」を参考にしてください。

深みのある並木道を演出するためのちょっとした工夫

両サイドの明るい部分を切り取る 参道両サイド(赤枠内)の明るい部分のトーンを落とします。ただ単に暗くするだけでは面白くないので、葉っぱで埋め尽くしたいと思います。そのために明るい箇所を切り取ります。

  1. 彩度を上げたレイヤーを選択状態にします。
  2. [あいまい選択]ツール(隣接(色)領域の選択)ボタンをクリックして、[しきい値]に白い部分以外が過選択されない程度の値を設定します。[あいまい選択]ツールは「GIMPで画像を切り抜く(その1)」や「GIMPで画像を切り抜く(その2)」でも解説していますので参考にしてください。

倍率を上げると作業しやすい [背景]レイヤーの目のアイコンをクリックして非表示にして、また、表示倍率を上げると作業がしやすくなります。

スタンプツールを使って葉っぱを描画する 葉っぱで埋め尽くすのは[背景]レイヤーでおこないます。

  1. [背景]レイヤーをクリックして選択状態にします。
  2. [スタンプ]ツールをクリックして、
  3. オプションメニューで図のように設定します。
  4. [ブラシエディタ]ウィンドウを表示させて、多少周囲をぼかした設定にして半径を画像の大きさに合わせて調整します。ブラシに関しては「ブラシの基本操作について」で解説していますので参考にしてください。
  5. 適当な葉っぱの部分で[Ctrl]キーを押しながらマウスをクリックして、画像ソースをピックアップします。そして明るい部分にポンポンとピックアップした葉っぱを描画します。時々ピックアップする位置を変えるとわざとらしくならなくて良いです。

暗い部分なので大雑把でも大丈夫 この場合はあまり神経質にならなくてもOK、こんな感じに緑で埋めます。右側も同様です。

暗室ツールで修正部分のトーンを落とす [背景コピー]レイヤーの木の幹がすこし明るめだったので、[暗室]ツールでトーンを落とします。

  1. [背景コピー]レイヤーをクリックして選択状態にします。
  2. [暗室]ツール(暗室ストローク描画)ボタンをクリックして、
  3. オプションメニューで図の様に設定します。「モード」や「露出」は調子を見ながら適宜変更します。
  4. スタンプツールと同様な操作でポンポンとクリックしてトーンを落としていきます。
石畳を明るくする

消しゴムツールでグラデーションの一部をボカシて消す 参道の石畳が必要以上に暗くなっているので明るくします。

  1. グラデーションで塗りつぶした[新規レイヤー]をクリックして選択状態にします。
  2. [消しゴム]ツール(消しゴムで背景色や透明に戻す)をクリックして、
  3. 参道の部分を何度かクリックして明るくします。ブラシの[半径]は大きめにして[強度]は最低にしたほうが、ぼわっと明るくなったような感じになります。

これで終了です。説明を詳細にしているのでぱっと見難しそうですが、実質20〜30分もあれば完成します。

最後に…

 トーンを落としすぎたとか、グリーンの彩度を上げすぎて不自然になってしまったときは、それぞれのレイヤーの[不透明度]を調整することでバランスをとることができます。大きな画像で使う場合は、ここで設定した彩度の数値よりも多少落とし気味にしたほうが良いでしょう。

ドラマチックな演出

光のフレアでの演出例 さらにもうちょっと手を加えて、陽光のフレアを加えるとこんな感じになります。ちょっとやりすぎかな。