建築物を強調する方法


GIMPを使って建築物を目立たせる例 以前書いた「目立たせたい部分を強調する方法」を読んだ不動産関係の知人から、あの建物の写真で解説して欲しいとのリクエストを頂いたので、今回は建築物を強調する方法について解説します。設計・施工関係ではPhoroshopを使ってかなりクオリティの高い画像を作成されていると思いますが、不動産販売関係でもこのような需要があるものなんですね。中古物件になると、レンダリングした絵とか写真が残っていなかったり、手元に取り寄せられなかったりするものなのでしょうね。

解説は結構長く描いていますが、素材が揃っていればこの程度のクオリティなら実質十数分から三十分もかからずにできてしまいます。不動産関係に携わっている方で物件の資料画像の作成には最適かと思われます。有利な商談にもっていくためにも、是非GIMPを使って建物の画像をきれいにしてあげてください。(この画像は中央区で散策中にたまたま撮影した写真です。この建物に関係する法人および個人と、この記事との関連性はありません)



周囲の建物をかすませる

 対象の建物を目立たせるには、周囲の建物をかすませるのが、立地条件等の視覚情報をスポイルすることなく表現できるので最適だと思います。

パスで建築物の輪郭線を描く 対象となる建物を領域選択するためにパスで建物の輪郭に沿って線を引きます。一般的な建築物であるかぎりそんなに複雑な形をしていないと思いますので、パスでもそれほど工数はかからないと思いますが、場合によっては、[あいまい選択]ツールを使って一気に選択できるようだったらそちらを使ってください。
パスの使い方に関しては→パスの基本操作についてを参考にしてください。

新規レイヤーは塗りつぶし方法を透明で作成する 隣接する建物をかすませるためのレイヤーを作成します。このとき「新規レイヤー」ウィンドウで「レイヤー塗りつぶし方法」で[透明部分]を選択して背景が透明のレイヤーを作成します。

グラデーションの新規作成と設定 かすませるためのグラデーションの設定をします。

  1. ブレンド]ツール(グラデーションを用いて塗りつぶす)をクリックして、
  2. 現在のグラデーションをプレビューしている窓をクリックします。
  3. 表示された「グラデーション」ウィンドウで[新規グラデーション]ボタンをクリックしてグラデーションを新規作成します。
  4. 表示された「グラデーションエディタ」のプレビューウィンドウで右クリックしてメニューを表示させます。
  5. [左終端色]をクリックします。

グラデーションの設定 「左終端色」ウィンドウで色を白に設定します。赤丸で示した部分に向けてドラッグすると白になります。または図のように数値を入力してください。さらに透明度を0にします。赤枠の[A]を0に設定します。

グラデーションを塗る 設定したグラデーションを塗ります。オプションメニューの[反転]にチェックを入れると上から下にドラッグすることで白→透明のグラデが塗られます。チェックを入れない場合は下から上へドラッグします。適当な長さでドラッグして最適な塗りになるまで何度かやり直してみてください。[Ctrl]キーを押しながらドラッグすると垂直に塗ることができます。

パスを選択領域に変換する 「パス」ウィンドウで先ほど描いた建物の輪郭線を選択して、[パスを選択領域へ]ボタンをクリックします。

グラデーションレイヤーの切り抜き [編集]タブをクリックして表示されるメニューで[切り取り]をクリックするか、[Ctrl]キー+[X]キーを押して選択領域を切り抜きます。これでぐんと建物が目立つようになりました。グラデーションを描画したレイヤーの不透明度を調整して、これで終了でも良いでしょう。

空を青空に変える

空を切り抜く イメージアップを狙って爽やかな青空を挿入したいと思います。

  1. [背景]レイヤーを複製して、
  2. [あいまい選択]ツール(隣接(色)領域の選択)をクリックして、オプションメニューで図のように設定して空の部分をクリックします。[しきい値]は空以外を選択しない程度の値にして、未選択部分が残るようだったら、[Shift]キーをおしながら選択領域に加えていく方法をとります。うまく空を領域選択できないような場合はパスを使ってください。また[境界をぼかす]は適宜設定してください。実際に使用する画像の縮小率が大きい場合はぼかす必要はないでしょう。
  3. 空をクリックして領域選択されたら、[Ctrl]キー+[X]キーを押してで切り取るか、[編集]タブのメニューで[切り取る]をクリックしてください。

青空の画像(津軽海峡) はめ込む空の画像です。津軽海峡で撮影したためカモメが写っていますが、これが入らないようにはめ込みます。この画像を開いて[Ctrl]キー+[A]キーを押した後[Ctrl]キー+[C]キーを押してクリップボードにコピーするか、[選択]タブのメニューで[全て]をクリックして[編集]タブのメニューで[コピー]をクリックしてクリップボードにコピーします。

空の画像を貼り付けてサイズを整える コピーした空の画像を貼り付けます。空の画像サイズが大きかったので、[フローティング選択領域]レイヤーを右クリックして表示されるメニューで[レイヤーの拡大・縮小]をクリックします。表示された[レイヤーの拡大・縮小]ウィンドウでこの画像の幅1200を「レイヤーサイズ」の[幅]に入力します。右サイドの鎖マークが繋がっていることを確認して、[拡大縮小]ボタンをクリックします。
※別ファイルの画像は直接作業している画面にファイルをドラッグアンドドロップしても貼り付けることができます。その際は[フローティング選択領域]にはなりませんが同様の操作で拡大縮小や位置調整ができます。

空の画像の位置を整える 縮小したら、もう一度右クリックして、メニューから[新規レイヤー]をクリックして固定させます。[移動]ツール(レイヤーや選択領域の移動)をクリックして空の位置を最適な場所にドラッグして調整します。このとき、入っては困るもの(空を飛んでいるカモメ)が入らないように位置調整します。場合によっては縮小幅を大きめにとって調整する余地を多めに残しておいても良いでしょう。

空の画像のレイヤー位置を変える 空を貼り付けたレイヤーをドラッグして空を切り抜いて透明にしたレイヤーの下に移動させます。

通りを走る車をぼかす

道路の車を領域選択する これまでの作業で右図のようになりました。これでOKという場合もあるでしょう。さらに通りを走る車をぼかすことにより、雑然としたイメージを和らげ、視線を建物に集中しやすくできます。
[矩形選択]ツール(矩形領域を選択する)をクリックして図のように通りの車が写っている部分を領域選択し、コピーして新規レイヤーで貼り付けます。

モーションぼかしをかける [フィルター]タブをクリックして表示されるメニューで[ぼかす]の[モーションぼかし]をクリックします。表示されたウィンドウで、「ぼかしの種類」に[線形]を選択し、「ぼかしパラメータ」の[角度]を0に設定したら、[長さ]のスライダーを動かしながら好みのぼかしになるように調整して[OK]ボタンをクリックします。

建物にかかっているボカシを消しゴムで消す モーションぼかしの処理をしたレイヤーで、[消しゴム]ツール(消しゴムで背景色や透明に戻す)を使って、建物の部分にかかっているぼかしを消します。周囲とのなじみが良いように[ブラシエディタ]ウィンドウで[強度]を下げて、適宜[半径]を調節しながら建物の周囲を整理します。

出来上がりの画像 白のグラデを塗ったレイヤーの[不透明度]を調整して出力したものが右の画像です。これで終わりでも良いですが、せっかくですから空の青さを印象付けて爽やかさを出してみるのも良いかもしれません。

空を切り抜いて前面に貼る

空の透明部分を領域選択する [あいまい選択]ツールをクリックして、オプションメニューの「類似色をみつける」の[透明領域の選択]にチェックを入れて、[Shift]キーを押しながら透明になっている部分(チェック柄)をクリックして分断されている空の部分を領域選択します。

空の画像を選択領域でコピーする 空の画像を貼り付けたレイヤーを選択状態にして、[Ctrl]キー+[C]キーを押すか、[編集]タブでクリックして表示されるメニューから[コピー]をクリックして、空の選択領域をコピーします。

コピーした空の画像を貼り付ける コピーした選択領域の画像を[Ctrl]キー+[V]キーを押すか、[編集]タブのメニューで[貼り付け]をクリックして貼り付けます。レイヤーウィンドウで貼りつけた[フローティング選択領域]で右クリックして表示されるメニューで[新規レイヤー]をクリックして固定します。

レイヤーの不透明度を調整してできあがり 最後に各レイヤーの[不透明度]を調整して仕上げます。この画像を出力したものが冒頭の画像(下)です。