逆光での撮影で失敗したデジカメ写真を修整する


逆光の修正 ビフォー&アフター(GIMP2.2)光の撮影時に、バック(背景)が明るく被写体は暗く写ってしまうことがあります。ストロボを発光させたり、露出補正などをしなければならなかったところを、気軽にパチリとシャッターボタンを押してしまうことはよくあることです。気軽さはコンパクトカメラの信条といえるのですが、気軽なあまり失敗する写真も少なくありません。GIMPを使ってそんな失敗写真を修整することができます。

の例は、太陽光に向かって撮影したという意味では逆光ではありませんが、撮影者の背後の山が太陽光を遮って、被写体が暗くなってしまった画像です。海水浴でのパラソルの下での撮影や、日傘をさした人を撮るときも、ストロボを発光させないとこのように被写体が暗く写ってしまう場合があります。被写体を明るく補正するために画像全体を処理してしまうと、背景が真っ白にとんでしまうため、ここでは暗くなっている部分のみを明るく修整して、バランスの良い画像に仕上げます。

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レベル補正ツールを使う

レイヤーを複製するず修正したい暗い部分を領域選択をするために、レイヤーの複製をしてそこで作業をします。[ダイアログ]タブをクリックして表示されるメニューから[レイヤー]をクリックします。[レイヤー]ウィンドウで[背景]レイヤーを選択して複製します。複製したほうを領域選択しますので、クリックして選択状態にしてください。

あいまい選択ツールで明るくしたい部分を選択する(GIMP2.2)[あいまい選択]ツール(隣接(色)領域の選択)をクリックして[しきい値]を適当に設定して、画像の最も暗そうな部分をクリックします。明るい部分も沢山領域選択されてしまうようだったり、暗い部分にたくさん未選択部分が残ってしまうようだったら値を変えてやり直してください。この写真の場合は、被写体、木、背後の人物、岩が選択されればベストです、少しくらい未選択領域が残ってしまうくらいの方が仕上がりはきれいだと思います。未選択部分はクイックマスクを使って塗りつぶしていきます。この場合だと[しきい値]を63で領域選択しました。女の子のショルダーバッグの紐と頭の部分、背後の女性のシャツが未選択となっています。背景の町並みが少し選択されてしまっています。ブログやホームページに掲載する画像でしたら、これくらいはあまり気にならないかもしれません。
[あいまい選択]ツールに関してはGIMPで画像を切り抜く(その1)GIMPで画像を切り抜く(その2)で詳しく解説していますので参考にしてください。

未選択になってしまった部分はクイックマスクを使う(GIMP2.2)選択部分を選択領域に加える作業をします。画面左下の[クイックマスクの切り替え]ボタンをクリックします。未選択部分がわかりづらいので赤を強調します。[クイックマスクの切り替え]ボタンで右クリックして表示されるメニューから[色と不透明度を設定]をクリックします。

マスクの色を濃くする(GIMP2.2)スクの色を強調するには「クイックマスク属性を編集」ウィンドウで[マスク不透明度]を80くらいに設定して[OK]ボタンをクリックします。

未選択領域を消す(GIMP2.2)選択部分を[絵筆]ツールや[消しゴム]ツールなどを使って消していきます。このとき筆の半径を小さくして、町並みの過選択部分を塗りつぶしていっても良いでしょう。クイックマスクの使い方に関しては、GIMPで画像を切り抜く(その5)で解説していますので参考にしてください。

描画色と背景色(GIMP2.2)なみに[絵筆]ツールのときと[消しゴムツール]のときでは描画色の制御が白黒反転しますので頭にいれておいてください。クイックマスクを塗ったり消したりするとき、例えば[絵筆]ツールで消そうと思ったのに塗りつぶされたときは、描画色を変えるかツールを[消しゴム]に変えて作業してください。

選択領域を切り取る(GIMP2.2)部の調整ができたら、選択領域を切り取ります。[編集]タブをクリックして表示されるメニューで[切り取り]をクリックしてください。これで修整したい暗い部分が切り取られて、[背景]レイヤーの明るさを調整することで、被写体を明るく見せることができます。またはこの逆でもかまいません。切り取る選択領域を反転して、このレイヤーで被写体の明るさ調整をしても良いでしょう。ここでは前者のやり方で進めます。

レベル補正ツール(GIMP2.2)「レイヤー」ウィンドウで[背景]レイヤーをクリックして選択状態にします。そして[道具]タブをクリックして表示されるメニューで[色ツール]のメニューの中から[レベル]をクリックします。

レベル補正ツールで画像を明るくする(GIMP2.2)示された「レベル」ウィンドウで[入力レベル]の右端の△マークを左にドラッグします。入力レベルのグラフ表示は画像の「明度」の分布を表示しています。暗い方の山が、主に領域選択した部分で、明るい方の山が背景の町並みや空の明度分布です。レベル調整はこの偏った明度(または色)の分布を伸張させる(明るくしたり暗くしたりする)ことができるのです。(ただし階調は荒くなります)

レベル補正ツールで明るさの微調整をする(GIMP2.2)景の明るさと見比べながら調整して、最適な場所がみつかったら、今度は真ん中のグレーの△マークを左右にドラッグさせて調整してみてください。多くの場合は多少左寄り(暗い側)にするとしっくりした画像になります。また、明るい部分、この画像では背後の岩に座っている女性の白のTシャツや、被写体の女の子(私の娘です)の顔の右側面のハイライトが、不自然に明るくなってしまうのを抑えるには[出力]レベルの右側の△マーク(白)を少し左にドラッグすると良いでしょう。

一応これで完成です。しかし写真によってはレベル補正した部分の荒れが目立ってしまう場合もあるでしょう。そんな方はもう少し読み進めてください。

レベル補正による弊害と対策について

レベル補正によって階調が失われている様子(GIMP2.2)い明度の分布を引き伸ばすことで階調が荒くなると記しましたが、ページ冒頭の画像のように縮小してしまうとあまり気にならないかもしれません。右図は実際に引き伸ばされた明度の分布図です。[入力レベル]のグラフで右側の低い山は背景の町並みや空で密度が高いですが、左側は櫛状になっているのがわかります。引き伸ばしたぶん白く歯抜けになってしまって、その部分の色や明るさの情報が無いことを意味します。女の子の肌が荒れた感じでキレイではないことからもそれがわかります。*1

0〜10のグラデーション(GIMP2.2)の黒い画面は、パソコンで表現できる明度で最も暗い部分を0、明るい部分を100とした場合の0〜10の明度のグラデーションとなっています。黒一面のように見えますが右側がすこし明るくなっているのがわかると思います。*2

0〜10のグラデーションをレベル補正する(GIMP2.2)れをレベル補正すると黒から白へのグラデーションが再現されます。これはモノクロだからあまり気になりませんが、カラーの写真画像だとこの状態でかなり荒れていることを一目で認識できるはずです。

レベル補正したグラデーションとそうでない画像の比較(GIMP2.2)かりやすいように0〜100の階調で描画したグラデーションとその入力レベルのグラフを右側に表示して比較したのが右図です。表示倍率を4倍にしました。かなり荒れている様子がわかります。(この画像はJPGの圧縮で画像が荒れないように80で保存した画像です)

レベル補正したグラデーションを選択的ガウシアンぼかしで補完する(GIMP2.2)くなってしまった階調を取り戻すための有効なツールとして、GIMPに標準搭載されている[選択的ガウシアンぼかし]があります。[ガウシアンぼかし]でも階調を補間できるのですが全体的にぼやけてしまいます。写真に使う場合は[選択的ガウシアンぼかし]が最適です。右図は上のレベル補正した画像を[選択的ガウシアンぼかし]を使って階調を補完した様子です。画像の荒れは気にならなくなりました。

実際の写真に選択的ガウシアンぼかしを適用した例(GIMP2.2)れを実際に写真に適用してみると右図のようになります。肌の荒れは滑らかになりました。その反面ショルダーバッグの肩紐の質感が失われています。髪の毛もさらっとした質感も保たれません。擬似的に階調を補うためにのっぺりとした印象になります。お好みに応じて[ぼかし半径]と[最大△]の値を変化させてみてください。荒れが少々残るくらいの修整が自然で良いかもしれません。[選択的ガウシアンぼかし]に関してはGIMPでレタッチ、女性の肌をより美しくする方法でも解説していますので参考にしてください。
どうしても大きいままの写真でホームページやブログに掲載したい場合や画像の荒れが目立つ場合は、この[選択的ガウシアンぼかし]が効果絶大だと思います。しかし、あまりやり過ぎると安っぽくなってしまいますのでお気をつけて!

*1:冒頭の画像は肌色を調整しています。その調整方法は別のページにて解説いたします

*2:モニターによってはわからないかもしれません