GIMPでピンぼけ画像を修整する


コスモスのピンぼけ写真を修整した例 デジタルカメラ、とくにコンパクトデジカメでは、ぼかしたいときにボケなくて、ボケて欲しくないときにピンぼけになることがあります。ボケボケに写ってしまった画像は救いようがありませんが、『もう少しシャープに写っていれば使える』写真なら、GIMPを使って修正して使える写真にすることができます。

 GIMPにはぼやけた画像をシャープにする機能があります。ほどよく使えばこのコスモスのように、ある程度までならしゃきっとします。クリックして元の大きさを確認してみてください。まだまだピンボケですが、縮小すれば使える画像として通用します。しかしピンぼけによって画像上に定着できなかったデータは、どうやっても取り戻すことはできません。修整ツールを使うことによって画像が荒れたり、ノイズが目立つことにもなるので、度を越した処理はかえって写真の質を落とすことになるので注意が必要です。目的や画像の大きさによって最適なツールも変わってきますので、そのあたりをわかりやすく解説していきます。(この写真は擬似的にピンぼけにしたものを、ツールを使って修正しています)

ツールの種類

 GIMPにもともと登載されているツールには、[明瞭化][非シャープ化マスク]の二種類ですが、これに加えて、「GIMP2を使おう」でダウンロードできるプラグイン、[Rrfocus][Iterative refocus]のふたつがあります。他にスクリプトが何種類かありますが、ここではこの4種類のツールを使って解説します。プラグインはそれぞれ、http://www.geocities.jp/gimproject/plug-ins/refocus.htmlhttp://www.geocities.jp/gimproject/plug-ins/refocus-it.html からダウンロードしてインストールします。リンク先にインストール方法等も記されていますので参考にしてください。

明瞭化(シャープ)

明瞭化ツールのダイアログ画面(GIMP2.2) [明瞭化]ツールは[フィルター]タブをクリックして表示されるメニューで[強調]の[明瞭化]をクリックします。一般的な他のグラフィックソフトではシャープとかシャープネスという名前が付けられることが多いです。操作がいちばん簡単で、[明瞭度]に数値を設定するのみです。

非シャープ化マスク(アンシャープマスク)

非シャープ化マスクのダイアログ画面(GIMP2.2) [非シャープ化マスク]ツールは[フィルター]タブをクリックして表示されるメニューで[強調]の[非シャープ化マスク]をクリックします。一般的なグラフィックソフトではアンシャープマスクと呼ばれていることが多いです。主に[半径]と[量]に数値を設定してシャープさを調整しますが、[しきい値]を使って選択的に適用範囲を指定することもできます。

Refocus

Refocusのダイアログ画面(GIPM2.2 プラグイン) [Refocus]ツールは[フィルター]タブをクリックして表示されるメニューで[強調]の[Refocus]をクリックします。初期値(Defaultsボタンをクリックすると初期値になります)で[Radius]でシャープ化させたい粒度のサイズを決め、[Matrix Size]はそれに合わせて増減(増やしても[Radius]の値によってそれ以上改善されない限度があるので、処理速度の低下を招くので必要最低限が良さそう)させます。[Gauss]の数値を上げつつ、荒れがひどくならない程度までシャープになったら、[Correlation]と[Noise]を調整しながら、斑状に荒れるのを抑えてシャープさを上げていく…という方法で私は使っています。上のふたつのツールよりもノイズを抑えられ、画像サイズの追従性が良いように思います。それから、プレビューウィンドウのリサイズや拡大ができるのがウレシイ機能のひとつです。

Iterative Refocus(Refocus it)

Iterative Refocusのダイアログ画面(GIMP2.2 プラグイン) [Iterative Refocus]ツールは[フィルター]タブをクリックして表示されるメニューで[強調]の[Iterative refocus]をクリックします。その名の通り反復して処理をすることで画像の品質やシャープさを高めていくツールです。他のツールに比べてダントツに処理時間がかかり、過度な設定をすると小さなサイズの画像でも数十分かかってしまいます。
使い方は、[Radius]と[Gauss]の設定の仕方はRefocusと同じような感じです。プレビューするのに時間が掛かるので、最初はPreviewの[Iterations] を1〜3くらいの低い値で調子をみて、最終段階の確認時に10とか20とか高い値に設定するとスムーズな設定ができると思います。ノイズが気になる場合は[Noise]の値を上げると良いでしょう。ただし上げるほどディテールは失われますので、画像の用途にあわせて設定してください。また、このツールだけ手ブレも補正する機能を持っています。使い勝手(処理の遅さも含めて)がちょうど三次元グラフィックソフトのレンダリングツールのような印象を受けます。
手ブレ修正に関する記事はこちら→GIMPで手ぶれ写真を修整する

ピンぼけ修正ツールのクセを知る

 まずツールによってどんなクセがあるのか、また仕上がりはどうなのか気になるところです。中には処理時間が長く掛かるツールものもあるので、ただ闇雲に使っては時間の無駄になります。テスト画像として文字をソフトを使って擬似的にピンボケさせて、どれくらいシャープに再現されるのか比べてみます。

文字をシャープに表示させてみる

ピンぼけさせた文字をシャープに再現したテスト結果(GIMP2.2) 文字をガウシアンぼかし(半径2px)でぼかした画像を各ツールで処理してみました。パラメータ(設定する値)や処理するアルゴリズムはツールによって異なり、同一条件での比較ができません。見た目で、「滲みすぎず」「荒れすぎず」「最も見やすい状態」になる設定で処理したものが右図です。
[Refocus]が一番元の字に近い印象を受けます。ただしにじみが取れきれていません。[Iterative refocus]もかなりいい感じですが、何度もコピー機にかけたような荒れが気になります。シャープさではこれが一番ですね。

同一画面でボカシの度合いを変えてテスト

テスト画像 次はボカシなしの文字や図とぼかしたものを混在させた右図でテストしてみました。通常の写真ではピントの合っている部分、そうでない部分、そしてボケの度合いは画像の場所によって一定でないことが多いものです。数字と◆は「薔薇」や●よりもボケの度合いを強くしています。ぼけの入った「薔薇」の字は前回よりもボカシの度合いが小さいので、上記テストと少し設定値を変えて処理しています。

ボカシの度合いを変えて各種ツールで処理したテスト結果(GIMP2.2) 予想に反してすごい結果になってしまったのが[Refocus]です。[Iterative refocus]は「薔薇」が両方ともほとんど同じような荒れ方になっています。[非シャープ化マスク]が最も自然な感じがします。[明瞭化]や[非シャープ化マスク]はボケていない部分にはなにも影響していないように見えますが、これは階調の無いモノクロ画像でのことで、実際の写真画像ではノイズが強くなったり、境界部分のコントラストに強くその影響が出てしまいます。

実際のデジカメ写真でピンぼけを修整してみる

元画像 ピンボケ写真の多くは画面一様にボケているわけではなく、肝心の被写体がボケてしまい他の部分にピントが合っているというパターンです。均一にボケていれば、特に[Refocus]や[Iterative Refocus]にとっては修正が容易ですが、そうでない場合は、ピンボケの部分のみをシャープ化する必要があります。ここではそんな状況を考えて実際にピンぼけした写真を修整します。
 この写真はピントが子どもの向こう側に合っている為に、ピンボケになっています。[電脳はさみ]などの領域選択ツールを使ってピンぼけした子どもの部分を切り取って別レイヤーに貼り付け、そのレイヤーを処理することにします。電脳はさみの使い方は「GIMPで画像を切り抜く(その3)」に解説していますので参考にしてください。
各ツールのパラメータ(設定数値)は、子どもの持っているジュースの文字が最もきれいにシャープになるように設定しました。
ちなみに元画像やテスト結果画像は圧縮(品質:80)して保存したものをアップしています。ここにアップされている画像を使って同じ設定で処理しても結果は同じにならないと思いますのでご注意ください。ご要望があれば、スト用元画像の配布も考慮いたしますのでしばらくお待ちください。

明瞭化(シャープ)

明瞭化ツールによるピンぼけ修正画像(GIMP2.2) 設定は[明瞭化]:88で出力してみました。サムネイル画像は50%に縮めたものです。サムネイル画像では気になりませんが、全体にノイズが多いのがわかります。

非シャープ化マスク(アンシャープマスク)

非シャープ化マスク(アンシャープマスク)によるピンボケ修整画像(GIMP2.2) 非シャープ化マスクの設定は、[半径]:0.5、[量]:5 でした。サムネイルでの見た目は[明瞭化]で処理したものと殆ど変わりませんが、若干こっちのほうがノイズが少ないです。

Refocus

Refocusによるピンぼけ修正画像(GIMP2.2プラグイン) Refocusは[Matrix]:5、[Radius]:0.7、[Gauss]:1.8、[Correlation]:0.45、[Noise]:0.77 での設定で出力しました。斑模様のノイズはなかなかうまく消せませんでした。もう少し粘って調整すればもっときめの細かい画像になったかもしれません。

Iterative Refocus (Refocus it)

Iterative Refocusによるピンボケ修正画像(GIMP2.2プラグイン) Iterative Refocusは[Radius]:1.28、[Gauss]:1.2、[Noise]:1000、[Iterative]:10 の設定で出力しました。描画に要した時間はおよそ5分(Pentium4 3GHz)でした。[Iterative]:20も試してみましたが、目でわかるほどの変化はありませんでした。4つの中で最も高品位の画像といっても良いのではないでしょうか。サイズを縮めなくても使えそうなくらいノイズが目立ちません。

各ツールのテスト結果の拡大図

各種ツールのテスト画像の拡大図 テスト結果を2倍に拡大して比較用の画像もつくりました。JPGによる圧縮荒れを考慮して圧縮率(品質)は100で保存したものなので176キロバイトあります。

適材適所に使うべし

 このテストではIterative Refocusが良い結果を出しましたが、だからといって他のツールが無用というわけではありません。元の画像が十分大きければ、縮小することでシャープ化によるノイズや画面の荒れは抑えることができます。[非シャープ化マスク]や[Refocus] で処理してから縮小させれば、[Iterative Refocus]で縮小した画像を処理するより時間的にずっと速く簡単に作業が進められます。一方、元画像が小さく、使用サイズが元画像の原寸大から半分程度の縮小率で使うなら[Iterative Refocus]が威力を発揮するでしょう。また小さな画像を鮮鋭化したい場合、たとえばアイコンやバナーやプロフィール画像などは[明瞭化]ツールで処理しても、他のツールとの差異は殆どありません。用途目的に合わせて最適なツールを使い分けてGIMPを楽しみましょう!!