滝の写真を滝らしく修正する


賀老の滝の写真に迫力をつけた例 観光名所で必ずカメラを構える場所のベスト10に入るのが滝ではないでしょうか。滝の轟音や水シブキを感じながら撮った写真は思い出深いものですよね。しかし実際にプリントしてみたり、ブログに載せようとパソコンで開いてみると、あのときの感動や臨場感は感じられません。

 一枚の写真からは、お腹に響くような音も水しぶきの冷たさも感じることができないのは仕方ありません。でもそのせいか、水が落下する迫力がそのときに感じた半分も描写されていないようにも思えることってないですか。みやげ店で買ってきた絵葉書に写っている写真のほうがはるかに魅力的に見えたりするものです。『素人が撮影したんだからしょうがないさ』とあきらめずにGIMPを使ってそのときの滝の迫力を少しでも再現させてみましょう。

※この写真は北海道で最大規模を誇る賀老の滝です。滝壷のない滝としても有名です。落差70メートルにしてはその迫力が感じられません(写真左)。近寄って撮影できないため、遠くから望遠で撮ったせいかもしれません。直射日光が当たっていたらもう少し水飛沫が白く映えて迫力があったと思います。ちなみに賀老の滝付近は土産物店などは全く無く、ヒグマもそぞろ歩く秘境です。

滝の迫力を甦らせる

背景レイヤーの複製 まず滝を強調するためにマスクをかけます。そのための画像とマスク用画像の分を作成するため、[背景]レイヤー2つ分複製します。

電脳はさみで滝を領域選択する 滝の部分を[電脳はさみ]をつかって領域選択します。このとき周りとのなじみを良くするために。[境界をぼかす]にチェックを入れ、10〜20くらい(画像の大きさにもよる)の値を設定しておきましょう。

滝以外を黒く塗りつぶす 滝を領域選択できたら、滝以外の部分を黒く塗りつぶします。[選択]タブをクリックして表示されるメニューで[反転]をクリックしたら。[塗りつぶし]ツールをクリックして、描画色を黒にします。画面でクリックすると滝の周りが黒く塗りつぶされます。

レイヤーマスクを追加する 塗りつぶしたとき余計なものが残っていたら、絵筆ツールなどで修正しておきます。次にもう一つ複製した方のレイヤーで、右クリックして表示されるメニューから[レイヤーマスクの追加]をクリックします。「レイヤーマスクの追加」ウィンドウでは、デフォルトのまま(何の選択でもOK)[OK]ボタンをクリックします。

レイヤーマスクにマスク用画像を貼り付ける 作成したマスク用画像をコピーしてレイヤーマスクに貼り付けます。この場合だと[背景コピー#1]を選択して[Ctrl]キー+[A]キーを押すか[選択]タブをクリックして[全て]をクリックします。その後で[Ctrl]キー+[C]キーを押すか、編集タブをクリックして表示されるメニューで[コピー]をクリックします。先ほど作ったレイヤーマスクの部分(右図赤枠)をクリックして[Ctrl]キー+[V]キーを押すか、編集タブをクリックして表示されるメニューで[貼り付け]をクリックすればレイヤーマスクに貼り付けることができます。

マスキングされた滝を表示してみる 背景を非表示にするとこんな感じになります。

マスクされた滝を強調する 今度はレイヤーマスクではない、滝の画像の方をクリック(右図赤枠の部分を選択)したら、[道具]タブをクリックして表示されるメニューで[色ツール]の[明るさ−コントラスト]をクリックします。表示された「明るさ−コントラスト」ウィンドウで[明るさ]と[コントラスト]の数値を上げるとご覧のように滝のボリューム感がアップします。
これで終了でも良いのですが、湿度の高いときに撮影したこともあって、うっすらを白っぽくかすみが掛かったようになっています。これを少し改善します。

モヤを取除く コントラストを高める用のレイヤーとして[背景]レイヤーももう一つ複製します。[道具]タブをクリックして表示されるメニューで[色ツール]の[明るさ−コントラスト]をクリックします。「明るさ−コントラスト」ウィンドウにて[コントラスト]の数値を少し上げて、モヤっとした感じを取除きます。

遠景を消しゴムツールで消す 遠景はモヤっとしていたほうがかえって遠近感が得られるので、滝の上の部分の景色を、[消しゴム]ツールでもってブラシの強度を下げ気味にして図のように消してしまいます。これでグっと臨場感のある滝になったと思います。

長時間露光のような効果を与える

滝に擬似的な長時間露光効果を加える 滝や渓流の写真でよく見る、長時間露光による絹糸のような水の表現を加えてみたいと思います。レイヤーのマスクではない方を選択状態(右図レイヤー赤枠の部分)にしておきます。[にじみ]ツール(画像にじみ)をクリックして、オプションメニューの[割合]に数値を設定します。100ではきつすぎるようでしたら適宜低い値にして何度か試してください。この場合はおよそ80を設定しました。ブラシを適当な大きさにして、多少[強度]を落とし気味にするとドラッグしたときのなじみが良くなります。滝の上から下に向けてドラッグすると滝の水がスーっとぼやけた感じ、つまり絹糸のような感じになります。モーションぼかしでいっきに処理することもできますが、何度かドラッグして手作業でやったほうが自然な仕上がりになると思います。
それから、この処理をすると少し滝が薄くなるので、再度[明るさ−コントラスト]ツールで明るく修整しておくと良いでしょう。また滲ませることで岩などの色もにじんで水の白と混ざることで違和感が出ることがあります。このときは滝を予めモノクロにしておくと良いでしょう。
これを出力したものが冒頭の画像です。

画像を変形させて迫力をつける方法

変形させて滝の迫力を増す [遠近法]ツールを使って滝を下から見上げたように変形するとさらに迫力が出ます。任意のレイヤーで右クリックして表示されるメニューから[可視レイヤーの統合]をクリックして、レイヤーを一つにまとめます。[遠近法](レイヤーや選択領域の遠近観を変更する)をクリックして、画像四隅の四角部分をそれぞれドラッグして台形に変形させて[変換]ボタンをクリックします。

トリミングして完成した例 変形したために画像がケラレるのでトリミングすると右のように縦長の画像になってしまいます。滝としてのイメージは損なわれませんので好みによって変形してみると良いでしょう。
この写真の場合は収まりが悪いですね。もう少し広角で撮影した写真だと自由なトリミングもできて効果的だったと思います。