普通のデジカメで3Dパノラマを作成する(その1)


関連記事:普通のデジカメで3Dパノラマを作成する(その2)
特集記事「普通のデジカメで3Dパノラマを作成する」で使用しているソフトはHugin、FastStone Image Viewer、PanoSphere_V11、PanoSphereFlash_v10、GIMPです。
●Huginの関連記事→「パノラマ写真ツールHuginのインストール」「パノラマ画像作成ツールHuginの使い方
●FastStone Image Viewerの関連記事→「デジカメ時代の超便利な多目的画像ソフト
また、http://d.hatena.ne.jp/kadokura/20070903/p1GIMPを始めいろいろ関連記事の目次ですのでそれらを参考にしてください。PanoSphereについては(その1)から(その3)にて解説していきます。

3Dパノラマとは

3Dパノラマの概念図 一般的に3Dパノラマとは、画像が立体的に見えるパノラマという意味ではありません。写真を表示するビューアーで上下左右をマウスやキーボードを操作してグルリと360度見渡せる画像を3Dパノラマと称しています。例えば…擬似的な球の内面に全方向の画像を貼り付けて、その中心から上下左右を眺めるようなイメージです。そこに三次元の概念を用いているので「3D」という言葉が使われているのだと思います。それに対して、「360度パノラマ画像をFlashビューアーで表示させる」で解説したような画像表示方法は同じ360度でも平面的な画像を表示するものなので2Dパノラマと呼んでいます。

 3Dパノラマはホテル、旅館、マンション、建売住宅の豪華さアピールする目的で使用されたり、観光地のパノラミックな風景をプロモーションしたりその用途は様々です。普通の一枚の画像に比較して臨場感やリアリティが格段に優れていて、同質の同じ大きさであれば複数枚の写真を並べるよりも訴求率が高くなるといわれています。それは、動画の再生ボタン(リンク)がついているとついついクリックしてしまうのと同様に、3Dパノラマが表示してあると誰もが操作してしまうのではないでしょうか?方向を回転させると何が写っているのかという探究心も手伝って、予め提示されている平面画像よりも見たいという欲求を昂進させ、人の目に焼き付ける効果が増すのでしょう。それが結果的に訴求率の高さにつながるのかもしれません。…ここでは訴求率というよりも楽しさを追求したいと思います(^^)

 3Dパノラマといえば以前であればフィッシュアイレンズで撮影したり、特殊な全天撮影用の反射鏡を装着して撮影する必要があり、機材が高価でよほど趣味が嵩じなければ手を出せるしろものではありませんでした。しかしHuginのように高品質な画像の貼り合わせができるソフトがフリーで使用できるようになったので、わたしたちが持っている普通のデジカメでも、懐を全く気にすることなく手軽に3Dパノラマを楽しめるようになりました。

3Dパノラマ用写真を用意する

 天地左右を撮影する場合、雲一つ無い空だけが写ってるような写真が一枚でもあると、Huginでの貼り合わせ時にコントロールポイントを自動生成できずにうまく処理できません。隣りの画像とダブらせた部分に共通の目印になるようなモノが写っていないと、きれいにつなぎ合わせることができないのです。またコントラストが低くかったりぼやけて写っていると誤差が生じやすくなり、正常な処理が行われません。こういった場合は手作業でコントロールポイントを付けます。建物でもいいし雲でもOK、自動でパノラマ写真を作るためにはハッキリ写っている物体が各画像に必要になります。このような林の中だとたくさんの目印になるモノが多いので、広角端で画角が広くないカメラには最適なロケーションといえます。ただし風の強い日は木の枝が大きく揺れてしまってダメですが…。
パノラマの画像合成過程

 上図は今回作る全方位画像の元画像の一部を取り出したものです。撮影画像→歪曲変形→貼り合わせ→完成のプロセスをたどります。コントロールポイントがうまく検出できないときはエラーとなり、処理途中で終了してしまう場合もありす。重なりの部分にこれくらいたくさんの共通するモノ(上画像では右下の青で塗った部分)があると、コントロールポイントも検出し易く、貼り合わせも正確におこなわれオートのままですんなりパノラマ画像が作成できます。どうしても空だけとか単一色の平滑な壁だけしか写っていない写真がある場合は手作業でコントロールポイントを作成するか、思い切ってそれらを外して部分的な3Dパノラマにしても良いでしょう。それに関しては後ほど解説したいと思います。ここでは上下左右360度の3Dパノラマに使用する全方位画像を簡単に作成することを目指します。

撮影方法

3Dパノラマ用素材写真の撮り方 カメラの角度を少しずつずらしながら、天地左右をくまなく撮影するだけですからこれといって難しくはありません。このとき上下左右の隣りの写真と2〜3割程度ダブるように撮影するのがコツといえばコツです。手持ちで撮影すると特に上下方向のダブりに大きな誤差が生じやすくなるため、三脚を使って撮影することを強くお勧めします。図のように水平方向をぐるりと撮ったら、角度を上げてまた360度水平方向を撮ります。真上の位置が画面に入るまで撮るので何周かぐるぐる回ることになります。下方向も同様です。

 またカメラはフォーカスロック(焦点固定)およびAEロック(露出固定)した状態で撮影する必要があるので、それらのロックスイッチ機能があるデジカメでは撮影時に一番きれいに撮りたい位置でロックをオンにします。そうしないとシャッターボタンを押すたびに露出やフォーカスが変わってしまい、きれいなパノラマ写真を作ることができません。ロックスイッチが無い場合はシャッターボタンを半押しにしたまま指を離さずに角度を変えながら撮影します。途中で絶対に指を離さなずにグルリと撮影する必要があります。ほんのちょっと根気と我慢が必要です。

 なるべく画角の広いレンズの方が撮影する枚数が少なくて楽ちんです。普通のコンパクトデジカメでは広角側が38〜35ミリですが、もしワイドコンバータレンズをお持ちであれば装着して撮影しましょう。この例ではもっともポピュラーな広角35ミリのデジカメで撮影しました。AEロックなどのスイッチが無いので半押ししたまま撮った画像です。全部で撮影枚数が57枚となり、撮影には十数分間を要しました。屋外での撮影では日の出日の入りの時間帯や、曇りと晴れ間が短時間に変化するような天候では、撮影した画像の明るさが場所によって異なってしまうので要注意です。

撮影後の画像ファイルの処理

 デジカメの画像ファイルをあなたは普段どんなサイズで保存してますか?640×480程度の小さなサイズで保存してる方は少ないのではないでしょうか?

 普通のデジカメで3Dパノラマ用の写真を撮るときは枚数が多くなりがちで、Huginでつなぎ合わせたとき非常に大きなサイズになってしまいます。ですので逆にこの程度の小さなサイズで撮影しても充分です。しかし画面に写ってしまった「要らない部分」…人とか落ちているゴミとかセンスの悪い看板とか…を修正したいケースもあるので大きなサイズで撮って、修正後に3Dパノラマ用にサイズを一括縮小して使ったほうが良い場合があります。また、特に高い解像度で表示させたい場合などは2048×1536ピクセル以上で撮影しておくと良いでしょう。

 一括変換や一括修整には前回「デジカメ時代の超便利な多目的画像ソフト」で解説したFastStone Image Viewer が役立ちます。AEロックで撮影するため、肝心な部分の露出に不満がある場合や色調をレタッチしたい場合もあるので、これも一括修正できます。ここでは2048×1536ピクセルから800×600ピクセルに縮小して、且つ彩度を上げる調整を一括処理する方法を解説します。

画像の選択と一括処理画面

3Dパノラマに使用する写真をピックアップする 3Dパノラマに使用する画像を抜き出します。かなりの枚数にのぼるので一枚いちまい念入りにチェックするのは大変なのでFastStone Image Viewerでフルスクリーンにしながらざーっとチェックします。OKだったら使用する画像を[Shift]キーまたは[Ctrl]キーを押しながら選択します。選択状態のままで右クリックして表示されるメニューで[一括変換]をクリックして「一括変換 形式/名前」ウィンドウを表示させます。

一括変換処理設定画面 左側ペインは選択した画像のリストが表示されています。右側の「ソース」リストはフォルダ内の全画像リストが表示されています。この画面でも選択の変更ができます。入れ忘れていたり余計な画像があったら除外できます。

 一括してサイズを変えたりレタッチ処理した画像ファイルを保存するフォルダは[出力フォルダ]に設定します。同じフォルダ内の例えばsmallに保存する場合は“./small”と入力します。選択ボタンをクリックして設定することもできます。

ファイルの出力オプション設定 [出力形式]はJPGが良いでしょう。[設定]ボタンをクリックすると「形式出力オプション」ウィンドウが表示されます。ここでは[クオリティ]を調整するくらいで他はデフォルトのままでOKです。[クオリティ]は値が大きいほど再現性の高い画像になりますがファイルサイズ(容量)が大きくなります、値を小さくすると画像が荒れるもののサイズは小さくできます。[EXIF/PICTデータの保持]にチェックが入っているか確認してください。入っていなかったらチェックしておきます。

 サイズや色調を変える場合は[アドバンスオプションの使用]にチェックを入れて、表示される[アドバンスオプション]ボタンをクリックします。

画像サイズ変更

画像リサイズ設定 「アドバンスオプション」ウィンドウの[リサイズ]タブをクリック(デフォルトではこのタブを表示)して[新規幅][新規高さ]にサイズを指定します。右横にある<Pick a Standard Size>からもプルダウンでデジカメ画像の既存のサイズが選べます。[アスペクト比保持]以外はチェックを入れなくてOKです。

色調補正

色調補正設定 [調節]タブをクリックして彩度をアップする調整をします。この画面で[デザインとプレビュー]をクリックします。(色補正は全方位画像が出来上がってからでもOKです。イメージサイズの変更のついでにということで…)

プレビューを見ながら設定する方法 左上の2つのプレビューウィンドウは「後」の方が処理後のプレビューとなります。[彩度]のスライダーを直接ドラッグするか、マウスのスクロールボタンをクリクリしてプレビューウィンドウを見ながら彩度の調整をします。時々[プレビューの制限]ボタンをクリックして原寸大で彩度の調子を見ます。また、他の画像もチェックするために、左ペインの「入力リスト」の画像名をクリックして一通りチェックすると良いでしょう。設定が終ったら[閉じる]ボタンをクリックします。
設定が終ったら「アドバンスオプション」ウィンドウで[OK]ボタンをクリックします。

一括処理実行

一括処理実行 [一括変換 形式/名前]ウィンドウで[開始]ボタンをクリックすると処理が開始されますが、[出力フォルダ]で入力したフォルダがない場合はこのようなアラートが表示されます。[OK]ボタンをクリックしてください。

一括処理プロセス表示画面 処理する画像のファイルサイズが大きかったり、処理内容が多岐にわたっていると処理時間が長くなります。スペックの低いパソコンではしばらく待たされることがあるので、大量のファイルを一括処理するときは前もって少ない数でどれくらい時間がかかるのか調べておくと良いでしょう。メモリーが足りなくなって、ディスクスワップ状態になると余計時間がかかることになります。
 無事に変換されていれば元画像フォルダ内のsmallフォルダ(ここでの場合)に縮小&彩度アップした画像が保存されます。